
PCXを快適に走り続けるためには日々のメンテナンスが欠かせません。数ある消耗品の中でも、命に関わる最も重要なパーツといえばブレーキパッドだ。
そこで、ブレーキパッドの交換時期に関わる厚みや残量の見方を一挙にプロの二級二輪整備士である私が解説していこう。
普段、ブレーキパッドの減り具合や厚みまで定期的にチェックできているオーナーは意外と少ないのではないだろうか?
ブレーキをかけたときに以前よりも効きが悪くなったように感じたり、キーキーという不快な金属音が聞こえたりしたら、それは危険信号の可能性があります。
しかし、まだ使えるのか?、それとも今すぐ交換すべきなのか?、を判断するには明確な基準が必要です。
愛車のPCXと長く安全に付き合っていくための知識として、今すぐに身につけておこう!
■この記事でわかること
- PCXのブレーキパッド交換時期は厚み3ミリが警戒ライン
- プロが解説!PCXブレーキパッド残量の見方
- 厚み以外でも判断できる交換すべき3つの予兆
- 最後に統括
PCXのブレーキパッド交換時期は厚み3ミリが警戒ライン

PCXのブレーキパッドは、使用すればするほど摩耗していく消耗品ですが、その交換時期を判断する上で最もわかりやすく、かつ重要な指標となるのがパッドの厚みです。
新品の状態からどの程度減ったら交換すべきなのか、その数値的な基準を正しく理解しておくことがトラブルを未然に防ぐ第一歩となります。
新品の厚みは約10mmで交換推奨は3mm以下

メーカーや製品によって多少の誤差はありますが、一般的にPCX用の新品ブレーキパッドの厚みは、土台となるバックプレートを含めて約10mm程度あります。
そのうち、実際にブレーキディスクと接触して削れていく摩擦材の部分は約4mmから5mm程度です。
このわずか数ミリの摩擦材が、車体の重量とライダーの体重、そして走行のエネルギーを熱に変えて受け止めているのです。
では、どのくらい減ったら交換を検討すべきなのか?
一般的に強く推奨されているのが、摩擦材の残量が3mmを切った段階です。
まだ3mmもあるなら大丈夫だと思われるかもしれませんが、ブレーキパッドは薄くなればなるほど熱容量が下がり、ブレーキの熱がキャリパーやブレーキフルードに伝わりやすくなってしまいます。
これにより、長い下り坂などでブレーキが効かなくなるリスクが高まるのです!
残り1mm以下は即交換で放置すると高額修理に・・

もしも日々のチェックを怠り、ブレーキパッドの残量が1mm以下になってしまった場合は、もはや警戒レベルではなく危険レベルであり、即座に交換が必要な状態です。
1mmという厚さは、少し強いブレーキを数回かければ無くなってしまうほどのわずかな量です。
この段階を通り越し、摩擦材が完全に無くなってしまうとどうなるのか?
ブレーキパッドの摩擦材の奥には、鉄でできたバックプレートという台座があります。
■バックプレートはこれ↓

摩擦材が消滅すると、この鉄のプレートが直接ブレーキディスクローターに押し付けられることになります。
鉄と鉄が高速で擦れ合うことになるため、強烈な異音が発生するだけでなく、ブレーキディスクローター自体がレコード盤のように傷だらけになり、深い溝が掘られてしまいます。
こうなると、単にブレーキパッドを新品に交換するだけでは済まなくなります!
傷ついたディスクローターは制動力を著しく低下させるため、ディスクローター自体も交換しなければなりません。
PCXのディスクローターは部品代だけでも高額ですし、交換工賃もかさむため、本来なら数千円で済んだはずのメンテナンス費用が数万円にまで跳ね上がってしまうことになります!
プロが解説!PCXブレーキパッド残量の見方

ブレーキパッドの厚さが重要であることは理解できても、実際にどうやって確認すればよいのか分からないオーナーも多いはず。。
バイクの構造に詳しくない方にとって、ブレーキキャリパー周辺は複雑に見えるかもしれませんが、実はPCXのブレーキパッド残量は、工具を使って分解などをしなくても、外側から目視で確認することが可能です。
のぞき込む場所はフロントキャリパーの後ろ側

PCXのフロントブレーキはディスクブレーキという仕組みを採用しており、車輪と一緒に回転する円盤状のディスクローターを、ブレーキキャリパーという装置が挟み込むことで減速します。
ブレーキパッドはこのキャリパーの中に組み込まれています。
確認するために見るべきポイントは、フロントホイールの右側にあるブレーキキャリパーです。
具体的には、キャリパーを真横から見るのではなく、前方あるいは後方から、ディスクローターとキャリパーの隙間をのぞき込むようにします。

矢印でしるしてある箇所が、ブレーキパッドの設置場所です。
車体側から覗き込むとパッドの断面が見えやすい構造になっています。
このとき、肉眼で確認しようとしても、キャリパー周辺は影になっていて暗く、黒っぽいブレーキパッドの残量は非常に判りづらいのが難点です。
正確に残量を確認するにはパッド本体を外す
周辺が暗く、残量確認が正確にできない場合は、パッド本体を外しましょう。

矢印でしるしているネジを2箇所外し、パッド本体から残量確認をしましょう。


このように、パッド本体を手に取ればブレーキパッドの側面が確認できるようになり、摩擦材がどれくらい残っているか、バックプレートまでの距離がどれくらいあるかが明確に見えるようになります。
【注意】PCXの後輪ブレーキはモデルによって違う
PCXの後輪、リアブレーキについては注意が必要です。
なぜなら、PCXは長い歴史の中でモデルチェンジを繰り返しており、年式や型式によってリアブレーキの構造が全く異なるからです。

具体的には、初期型のJF28からJF56、JF81といったモデルまでは、リアブレーキにドラムブレーキという方式が採用されています。
ドラムブレーキの場合、外部からブレーキパッド(シュー)の残量を直接見ることはできません。
その代わり、ブレーキアームの付け根付近にインジケーターと呼ばれる目印があり、ブレーキをかけた時にアームの矢印がどの位置に来るかで交換時期を判断する仕組みになっています。
一方で、JK05やKF47といった比較的新しいモデルや、160ccクラスの一部のモデルでは、リアにもディスクブレーキが採用されています。
この場合はフロントと同様に、リアキャリパーの隙間からのぞき込んでパッドの厚さを確認することになります。
厚み以外でも判断できる交換すべき3つの予兆

ブレーキパッドの交換時期を判断する最も確実な方法は目視による厚さの確認ですが、それ以外にもPCX自体が発するサインから交換時期を察知することができます。
日々の運転の中で五感を研ぎ澄ませておくことで、トラブルを未然に防ぐことができるのです。
走行距離の目安は1万kmから1万5千km

一つ目の目安は走行距離です。
もちろん、ストップアンドゴーの多い都心部を通勤で走る人と、信号の少ない郊外をツーリングで走る人とではブレーキの使用頻度が全く異なるため一概には言えませんが、一般的なPCXの利用シーンを想定すると、およそ1万キロメートルから1万5千キロメートル程度がブレーキパッドの寿命となるケースが多いです。
新車で購入してから、あるいは前回の交換から1万キロを超えているようであれば、一度しっかりと残量を確認すべきタイミングに来ていると言えます。
ブレーキフルード液面の低下をのぞき窓で確認
二つ目の予兆は、ハンドル周りにあるブレーキフルードのタンク、マスターシリンダーの確認です。

朝一からPCXのブレーキフルード交換👍 pic.twitter.com/dfFK8PEvSo
— 黒いポッポ(ブラバ(2号機)重傷の為治療中)3号機出動中❗️ (@buraburaBB44) July 6, 2022
ハンドルの右側、ブレーキレバーの付け根付近に四角いタンクがあり、そこに丸い点検窓がついているはずです。この窓から中の液体の量を見ることができます。
ブレーキパッドが摩耗して薄くなると、その分だけキャリパー内のピストンが外側に押し出されます。
ピストンが押し出された空間を埋めるためにブレーキフルードがキャリパー側に流れ込むため、結果としてマスターシリンダー内の液面が下がることになります。
もし、ブレーキフルードの漏れがないにも関わらず、点検窓から見える液面が「LOWER」のレベル近くまで下がっている場合は、ブレーキパッドがかなり減っている可能性が高いというサインになります。
金属音はキーキー音とゴーゴー音で区別する

三つ目の予兆は音です。
ブレーキをかけた時に聞こえる音には、いくつかの種類があり、それぞれ意味が異なります。
よくある「キーキー」という高い音は、ブレーキの鳴きと呼ばれる現象で、パッドとローターの共振やダストの蓄積、あるいはパッドの角が立っていることが原因であることが多く、必ずしも寿命ではありません。
しかし、ブレーキパッドにはウェアインジケーターと呼ばれる金具がついているものがあり、交換時期が来るとこの金具がローターに当たって意図的に「キーー」という音を出して知らせるタイプもあります。
一方で、絶対に聞き逃してはいけないのが「ゴーゴー」「ガリガリ」という低く鈍い金属音です。
この音が聞こえた場合は、すでに摩擦材が完全に無くなり、バックプレートの鉄とディスクローターの鉄が直接削り合っている末期的な状態を示しています。
この音が一度でも聞こえたら、直ちに走行を中止し、レッカー等でバイクショップへ運ぶ必要があります。この音が出るまで放置することは絶対に避けなければならない!
最後に統括

PCXのブレーキパッド交換時期について、厚さ3ミリという基準から確認方法、費用まで詳しく解説してきました。
ブレーキパッドは、ライダーの命を乗せて走るバイクにおいて、止まるという最も重要な機能を担うパーツです。
3ミリを切ったら交換の準備を始め、1ミリになったら即交換というルールを徹底することで、ディスクローターへのダメージを防ぎ、無駄な修理費の発生を抑えることができます。
何より、万全なブレーキ性能を維持することは、あなた自身と周囲の安全を守ることに直結します。
まずは今週末、愛車のPCXの前にしゃがみ込み、スマホのライトを照らしてキャリパーの隙間をのぞいてみよう。
そのひと手間が、安心で快適なバイクライフを支える大きな一歩となるはずです。
もし自分での判断が難しいと感じたら、迷わずバイクショップに相談へ行きましょう。
プロの目を借りることも、立派なメンテナンスの一つだ!
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